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2013年11月

つましな整骨院と旭山

建築は土地の上に建っています。
どんな建築でも、地球上で唯一そこにしかない場所を占有して建つのだから、建築とその場所とはより分かちがたい関係でありたい。
どこに建てても関係ないような、閉じていて、自己完結的な建築じゃつまらない。

新築でもリノベーションでも、どうしたら廻りの環境を建築に取り込むことができるのか考えることは楽しいものです。

先日、長野市妻科神社の西側に新築中の「つましな整骨院」の建て方が完了しました。
小さな小さな整骨院ですが、長野市のシンボル的な存在の旭山(あさひやま)をバックにした場所性を存分に引き出したい。
直感的にそう思える場所でした。

で、最初に描いたイメージスケッチがこれ。


小さな建築は内部の機能が単純なので、大きな変更もなく、ほぼこのイメージのまま着工に至り、建て方。


ねらい通りの位置に旭山が見えて、一安心。


角度によって別の表情を見せる旭山の麓を意識したドーマー窓の形状が見えてきました。

この場所とこの建築がより強い関係性を持って、長くみんなから愛されますように。


アソビズム長野ブランチプロジェクト その1

【CAMP不動産】CASE2 アソビズム長野ブランチプロジェクト その1

CASE2では、桜枝町にある飯田館という元旅館をリノベーションした「アソビズム長野ブランチ」プロジェクトを紹介します。
→アソビズム長野ブランチプロジェクトのHPはこちら

CASE1として「藤田九衛門商店」におけるリノベ工事を紹介してきましたが、こうした工事の進め方はマイルームの倉石さんがそのベースをつくってきました。図面がほとんどない状態で工事が始まるスタイルはドキドキですが、なるほど自由度が増してリノベ工事には合っていると思います。

考えてみれば、かつて大工の棟梁は、必要最低限の図面だけで、旦那との信頼関係のもと、職人を束ねて建物を建てて、その仕事に見合う報酬を得ていたのだから、工事の進め方として全く新しいわけでありません。

しかしながら、細部に分業化されて細切れになった部品や専門工事を予定調和的に組みあげるような建築のつくり方に慣れてしまっている現代では,施主にも設計者にも施工者にも理解され難いスタイルだと言えます。

そんななか、自分の仕事場は自分たちでつくっちゃおうという、アソビズムの真にクリエイティブな思想との相性が合ったのか、CAMP不動産がこのアソビズム長野ブランチ プロジェクトをお手伝いさせていただくこととなりました。


↑リノベ前の飯田館の外観。


↑1階。立派な梁で構造的にはしっかりしてます。


↑2階客室。以前内部を改装したのか、天井には新建材の化粧板が張られています。

つづく。





PSカンティーナ(輻射空調ワインセラー)



カンティーナとはイタリア語で貯蔵庫の意。

輻射冷暖房パネルを扱うピーエスグループのパンフレットに、弊社設計のイタリアンレストラン「イニツィアラクチーナ」のワインセラーを掲載していただきました。

放射と自然対流による空調でワインをやさしく冷やしています。

もちろん客席の空調も輻射冷暖房ですので、ぜひ、エアコンの空調とは違う、このやさしい空調をお店で体感してみてください。


藤田九衛門商店 その4 仕上げDIY編

積極的にリノベーションという手法を選択した建主が、自ら施工も行いたいという考えに至るのは自然な流れだと思う。

単にコスト削減という理由から、しかたなくDIYを行うのではなく、むしろ楽しみながら地域のコミュニティーに溶け込む手段としてDIYを行う人が増えています。

リノベーションにおける最大の魅力は、これまで誰からも価値がないと思われていた建物が、自分たちの手で甦る過程を経験すること自体にあるということに、多くの人が気づき始めたのではないでしょうか。

藤田九衛門商店の場合も、土壁や板張り、塗装、かまど製作等は建主直営のかたちで工事が進められました。

→塗り壁隊による活動記録はこちら 


↑店舗の壁に埋め込まれた金属造形作家の角居さんによるタグには、左官工事に携わった方々の名前が刻まれています。


藤田さんこだわりの窯や、暖簾も素敵に仕上がりました。


ロゴなどグラフィックデザインはCAMP不動産ではなく、アンドデザインの関谷さんが担当されました。

こうして、たくさんの人の関わりを感じながら藤田九衛門商店はできました。
単に気に入ったインテリアを「買う」のではなく、共に「つくる」という意識が色濃く見えた楽しい現場でした。

ただ、建築工事が多様で複雑化している現代では、DIYではできない専門性の高い工事や調整は素人では難しいところ。
CAMP不動産では、こうした「つくる」ことに対する志向性を持つリノベオーナーのサポートも行っていこうと考えています。


藤田九衛門商店 その3 仕上げ編 床

CAMP不動産では、躯体の補強を終えて、次は店舗の土間床の仕上げをどうするのか頭を悩ませていました。
というのも、最初に考えていた「洗い出し」という仕上げは、予算的にかなり厳しかったからです。

コンクリート金ゴテで仕上げてしまうのもいいが、コストを掛けずにひとひねり欲しいところ。
そんな時に、デザイナーの太田さんからよいアイデアが出てきました。

「土間床を川に見立てて鯉を泳がせましょう。」

忘れていました。
藤田九衛門商店では、鯉の形を象った『鯉焼き』を看板菓子としていたのでした!

こういう発想は、建築的な仕上げばかり考えて凝り固まった頭をほぐしてくれます。

で、早速、CAMP不動産のメンバーではありませんが、その頃KANEMATSUに入居していたデザイナーの廣田くんにお願いして、鯉のデザインと型紙を作成してもらい、その型紙をコンクリート打設時に配置して押さえました。


全体に、ほうき目をつけて出来上がった床がこれ。

派手さこそありませんが、なんとも渋い意匠になりました。

きっと、土間床に鯉の形を見つけたお客さんは、ニヤリとするに違いない。まるで隠れミッキーのようです。

こういう”遊び”をどんどん取り入れちゃうことができる機動力の高さも、CAMP不動産の面白いところです。


藤田九衛門商店 その2 躯体編

前回からのつづき。

早速リノベプランをもとに建物の解体工事が始まります。
この時点で詳細な図面がないのですから、解体工事を進めながら解体する部分を現場で即断していきます。
この、行き当たりばったり感(言葉は悪いですが)というかライブ感がCAMP不動産の面白いところ。
施主はドキドキだと思いますが。。。

特に木造一戸建てのリノベ工事は、解体してみて、はじめてわかることもあるので、状況に応じて構造や工法、施主の要望や使い勝手、デザインや工事費、時には大家さんやご近所との関係なんかも総合的に考慮して、その都度、最適最前と思われる工事を行っていきます。

例えば、壁の足元の「土台」という構造部材が傷んでいるだろうことは想像していましたが、程度と範囲は解体してみなければわかりませんでした。

それを、「土台」の状況を確認しながら解体して、本当に補強が必要な部分を現場で確定させていきます。

で、必要な範囲に「土台」を入れ替えました。

やってみなければわからないリノベ工事においては、想定されるリスクを最大限に見積もってしまうのが一般的だと思います。
しかし、CAMP不動産ではリスクの内容を見極めてから、その都度必要に応じた対処をしているので、無駄がありません。

このように、インスペクションとエンジニアリングの双方の能力を兼ね備えた専門家集団であるのがCAMP不動産の強みです。

そんなこんなで、藤田九衛門商店の場合も、建物が傾いていたり、土台が腐っていたり、あるはずの柱がなかったり、木造一戸建ての”リノベあるある”な問題点は一通り経験して、ひとまず躯体を使用可能な状態にしていきます。

次回は、いよいよ仕上げ工事編。


case1 藤田九衛門商店

CAMP不動産が行うリノベのカタチ(プロジェクトの進め方)をおぼろげながらイメージした最初の物件は、東之門町の「藤田九衛門商店」でした。小さい古民家で、10年以上空き家となっていた物件です。



先ず最初に、施主である藤田さんの要望を聞きながらラフな図面とイメージスケッチを描きます。



施主にイメージが了承されれば、この図面だけで概算見積もりを立てて工事を始めてしまいます。

一般的な建築工事では、工事に入る前に詳細な既存調査と実施設計図面を描き、工務店などに見積もりを取って、詳細な工事金額が確定してから、ようやく着工となりますが、CAMP不動産ではその部分を大幅に省いています。

これは、設計サイドと施工サイドとの信頼関係(もちろん施主とも)と、リノベ物件を多く扱ってきたこれまでの経験値によるところが大きいのですが、そもそもリノベーション工事は予測不可能な部分が多く、新築工事のような予定調和的な進め方は合わないのです。

”やってみなければわからない”のだから、やってみちゃおう!ということです。

最初にいろいろと決めすぎず、その場その場の状況に合わせて柔軟に、そしてアドリブいっぱいに工事が進んでいきます。
もちろん、構造的な不具合が見つかればその場で対処していきます。

つづく

タグ :リノベ建築

CAMP不動産



今年の7月から宮本も参加している新事業「CAMP不動産」。

CAMP不動産は、不動産業を営む株式会社マイルームの倉石さんを中心に、マンズデザインの太田さん、シーンデザインの宮本の3人がとりあえずの構成員です。

有限責任事業組合ボンクラが管理運営するビニールの加工工場をリノベーションしたシェアオフィスKANEMATSU。
そこに事務所を構える3事業者が、それまで各々携わってきたリノベやリノベの周辺に横たわる事柄に対して、各事務所のスキルを横断的に生かしながら取り組んだら、もっとすごいことができるんじゃないかと始めたのがキッカケです。

さて、では具体的にCAMP不動産では何がしたいのか?何ができるのか?
これがなかなか一言で説明しづらい。
建築やまちづくりに留まらず制度や社会的課題にいたるまで、やりたいこと、やれそうなことが本当にたくさんある。

活動を始めて3ヶ月以上が経ち、ようやく事業の成果も少しづつ形になりつつあるので、事例も交えながら、何回かに分けて、これから少しづつ紹介していこうと思いますので、よろしくお願いします。
(CAMP不動産のHPも制作中)


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