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2007年11月

版築壁


やきもののまち常滑にあるINAXライブミュージアムに行ってきた。
お目当ては、土・どろんこ館の版築壁。是非ともリアルに建ちあがった現代の版築壁を見てみたかったからだ。

もう6年も前の話になるけど以前勤めていた宮本忠長建築設計事務所で、コンペで勝ち取った島根県古代文化研究センターの計画も、同じ版築壁を外壁全てに施すというものだった。
そちらの方は県の財政難を理由に無期限凍結事業となってしまったが、当時担当者だった私は版築についてずいぶん研究や実験をして、実際にモックアップを製作したりして実施設計を終えた経験があり、版築壁にはかなりの思い入れがあったからだ。

現実の版築壁を前にその頃を思い出すと同時に、自分が実現できなかったという、ほんの少しの悔しさと、考えていたことが現実に出来たんだという嬉しさとで複雑な気持ちになった。でも実際に版築壁を見ることができて、なんとなく自分のなかで引っ掛かっていたものがとれたような思いがして本当に見に来て良かった。

             古代文化研究センター計画外観パース



コラージュ


常滑で見つけた木造3階建ての旅館「丸久」のファサード。

これはまさに断片の集積という最も単純かつ独創性のある“コラージュ”という手法。

“近代主義の「均質性の統合」に対して「コラージュの統合」を図る”とかなんとか難しい理屈はそっちのけで「面白いものは面白いじゃん」とやってのけている様が親近感を感じさせる。

これぞ和風スパイラル(たとえ古っ。)
ちなみに下の写真が槇文彦によるスパイラルのファサード。



水切りに思うこと



約100年前に建てられた古い建物の窓下の水切り。

古美(ふるび)た感じがとても良い味をだしている水切りのデザインだが、現代住宅の窓下水切り端部の処理としてはNGかな。

気密性や断熱性を確保するためにアルミサッシを使用する現代住宅には、窓下に汚れが発生している事例を多く見かける。大気中の汚染物質が窓際のシーリング材に付着し、雨水によって窓の水切り端部から流れて下部の壁面を汚す。シーリングを多用するサッシの採用はこの汚れが発生しやすい。
だから、近年の水切りは端部を折り上げたり、耳をつけて立ち上がりをつくって水が壁面を汚さないような処置をする。

100年前の建物に比べたら、現代住宅は桁違いの気密性能や断熱性能を備えるものとなった。快適な環境性能を維持するためには、最近のサッシ水切りのように、その性能を確保する新たな部材を付加したり、形状を変えたりする必要がでてくる。さらにその部材の性能を確保するために・・・議論は限りなく続く。

この水切りは、そんな難しい議論と遠くかけ離れたところから「考え過ぎだよ」と笑っているかのようだ。建築がもっとおおらかで、楽しいものであった時代のディテールは見ていても心地よい。

タグ :水切り板金

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